誤嚥性肺炎の原因とその対策

健康

挨拶

今回のテーマは「誤嚥性肺炎の原因とその対策」についてです。

厚生労働省の報告から、2019年の段階で肺炎による死者は年間4万人を超え、肺炎は日本人の死因第5位へ位置し、その中でも特に多いのが「誤嚥性肺炎」です。

誤嚥性肺炎は、加齢に伴う嚥下機能の低下によっても起こりえますし、脳血管障害や神経難病等の病気によっても嚥下機能が低下して起こりえます。

誤嚥性肺炎は、肺炎により呼吸機能が低下するだけでなく、心臓への負担を増加させることや嚥下機能が低下することで食事への影響も生じるなど、合併症も多くあり生命予後に直結するものです。

今回は「誤嚥性肺炎の原因とその対策」についてお話していきます。

今回の記事は

誤嚥性肺炎の原因と対策について知りたい方に対して

誤嚥とは何か、肺炎になる経緯、誤嚥性肺炎にならないための方法について解説します。

嚥下と誤嚥について

誤嚥性肺炎とは、簡単に言うと「異物(唾液や食べ物など)が気管に入り、吐き出すことが出来ず、肺が炎症してしまう」状態の事です。

誤嚥性肺炎を知るためには「誤嚥」についてと「肺炎」に分け、まずは「正しい嚥下」と「誤嚥」についてを知る必要があります。

「嚥下」は口にいれた食べ物を自然に(嚥下反射で)食道へと送り込むことをいいます。

「誤嚥」は嚥下反射がうまく出来なくなることで、食べ物が気管に入ってしまうことを言います。

加齢や疾患などで、飲み込む力が低下し、「嚥下障害」になると、「誤嚥」を日常的に繰り返してしまうといわれています。


誰にでも起こり得る障害です。


次に「正しい嚥下」と「誤嚥」の違いを見てみましょう。

〇正しい嚥下

気管の近くを食塊が通る瞬間だけ、喉頭蓋が閉まります。

×誤嚥

喉頭蓋が閉まるタイミングがずれたり、閉まりきらなかったりして気管に食塊が入ってしまいます。

誤嚥の種類「顕性誤嚥」と「不顕性誤嚥」

「顕性誤嚥(けんせいごえん)」は、むせたり、咳き込んだりする明らかな誤嚥をと言います。

「不顕性誤嚥(ふけんせいごえん)」はむせたり、咳き込むことのない誤嚥のことを言います。

不顕性誤嚥は夜間の就寝中や寝たきりの場合によく起こり、気づきにくいため、 知らないうちに肺炎になってしまうこともある危険な誤嚥です。

むせこみや咳き込み以外の誤嚥のサインを知っておきましょう。

以下にまとめます。

不顕性誤嚥のサイン

・飲み込んだ後、湿ったガラガラ声になる

・風邪や尿路感染の症状がないのに頻繁に熱が出る。

・痰が増える

誤嚥性肺炎について

「嚥下障害」は医療・介護現場、さらに在宅介護の場でも多く見受けられます。

適切な予防・対策をしないと、さらなるトラブルを引き起こしかねません。

トラブルの一つとなるのが“誤嚥性肺炎”です。

誤嚥性肺炎とは、口の中にある細菌が食べ物や唾液に付着し、それを誤嚥して吐き出せないで放っておくと、肺の中で炎症を起こしてしまうことです。

また高齢者の肺炎罹患者の7割以上は「誤嚥性肺炎」と言われています。

誤嚥性肺炎による死亡者数は、2019年には男女合わせて約4万人以上と報告されています。

年々増加の傾向にあり、現在の傾向が続けば、2030年には死亡者数が約13万人にまで増えるという予測があります。

高齢の方にとって、誤嚥性肺炎は誰にでも起こりえる、身近に迫る問題です。

嚥下障害と栄養障害

嚥下障害により、食べられる量が減ると「低栄養」と「脱水」を引き起こします。

「低栄養」とは、健康的に生きるために、必要な量の栄養素が摂れていない状態を指します。

その中でも特に、たんぱく質とエネルギーが充分に摂れていない状態のことを「PEM(Protein energy malnutrition):たんぱく質・エネルギー欠乏(症)」といいます。

高齢者では特にPEMが問題となっており、寝たきりの人はその割合が高くなっています。

PEMは、血清のアルブミンの値が一定以下になっているか、また体重がどれくらいの割合で減少しているかといったことから判断されます。

「脱水」とは、身体から水が脱している状態で、体内の水不足です。

私たちが生きていくために「水」は欠くことのできない存在ですが、その摂取量が不十分であることによる健康への障害が多くの悲劇を引き起こしてしまいます。

つまり、「嚥下障害」により、食べられる量が減ると「栄養障害」を引き起こし、体を作るための栄養が不足してしまい、飲み込みに使う筋肉を始め、全身の筋力が低下し、さらに嚥下機能が低下するといった、「嚥下障害による負のスパイラル」に陥ります。

嚥下障害の大事なポイント

全ての誤嚥が肺炎に発展するわけではありません。

誤嚥=誤嚥性肺炎というイメージが広がっていますが、すべての誤嚥が肺炎につながるわけではありません。

たとえ誤嚥しても、力強い咳で吐き出す力や細菌感染に対する体力・免疫力があれば肺炎に発展しない可能性もあります。

実際私たちも誤嚥しても強くせき込むことで異物を気管内に留めないことで肺炎を予防していると思います。

例えば

お茶を飲んだが誤嚥し、強くせき込んだり、食べ物を食べた際に気管に異物が入った時も強くせき込むことで楽になったことはありませんか。

つまり誤嚥は若くして健康でも起こります。

でも、誤嚥しても次の日に熱が出て動けなくなったり、呼吸が苦しくて動けなくなったなんて事は無かったと思います。

それは私たちが誤嚥しても強くせき込むことで異物を気管内に留めないことで肺炎を予防しているためです。

一方、低栄養や脱水状態にあると、抵抗力の低下を招き、肺炎を起こしやすくなります。

誤嚥を予防する工夫をするとともに、誤嚥を肺炎に発展させない体作りを目指すことが重要です。

誤嚥性肺炎を予防するためには気管に異物が入っても吐き出せる咳の強さ「咳嗽力(がいそうりょく)」が必要です。

咳嗽力(がいそうりょく)とは

咳嗽力(がいそうりょく)とはせき込む力の事です。

死因でも挙げられている誤嚥、窒息、肺炎には咳嗽力が最も関わってきます。

咳嗽力が弱ければ食べ物の残りや水分、自身の唾液、痰などを喀出(かくしゅつ:外に出すこと)出来ません。

そうすると気道狭窄を招き、換気量が低下するため呼吸困難が生じてパニックとなり、場合によっては窒息へ至ってしまいます。

咳嗽力は吸気(息を吸うこと)と呼気(息を吐くこと)の強さに比例します。

そのため、たくさん空気を吸い込み、勢いよく吐き出すことが重要となります。

たくさんの空気を吸って肺に留めるには呼吸筋と咽頭筋の力が必要です。

次に嚥下機能の維持や咳嗽力に必要な具体的な体操方法について説明します。

上記は自身で呼吸をコントロールできる人向けです。

筋ジストロフィーや筋萎縮性側索硬化症(ALS)など神経難病の方はそもそも自分自身で肺を膨らませることが難しくなる病態があります。

そこで肺活量を維持するために必要になるのが陽圧換気による深呼吸です。

具体的には蘇生バック(Bag Valve Mask:BVM)を使用し、エアスタック(息止め)を行い、肺を加圧し吐き出すMIC(Maximum Insufflation Capacity:最大強制吸気量)トレーニングやカフアシストE70を使用した機械的咳嗽補助装置で陽圧と陰圧の急激な圧差を利用して疑似咳嗽を生み出す方法があります。

特にカフアシストは在宅で人工呼吸器をしていれば加算も付き自宅で使用できる機種があります。

これらを用いて排痰を行うことで気管支に痰が残留する頻度が減少し誤嚥性肺炎のなる確率を下げることが出来ます。

口の体操方法

次に嚥下機能が維持されやすくなる口の体操の紹介です。

有名なのが「パ・タ・カ・ラ」の発声練習です。

口周りの運動を行うことで嚥下機能が維持されやすくなり、結果として誤嚥を予防し、肺炎になる頻度を抑えてくれますので、時間があるときには口を動かすなどを積極的にしていきましょう。

咳嗽力を鍛える運動

咳嗽力を鍛える具体的な方法は以下の3つです。

①ティッシュペーパーを吐いた息で揺らす。

②加圧腹筋

③風船を膨らませる

①ティッシュペーパーを吐いた息で揺らす

ティッシュペーパーを1枚用意します。

次に顔の目の前にティッシュペーパーを持ってきて息を吐き、ティッシュペーパーを揺らします。

徐々に手を前に伸ばして口とティッシュの距離を伸ばします。

手で伸ばす距離に限界を感じたら

仰向けに寝て、次は天井からティッシュペーパーを垂らし、再度息を吹きかけてティッシュペーパーを揺らします。

所謂、呼気流量を増やす運動です。

②加圧腹筋

仰向けに寝て、頭を床から浮かします。

両手をヘソの下(下腹部)に当て、息を最後まで吐き切ります。

下腹部に力が入り、中から手が押し返されれば完璧です。

次になるべく長く息を吐くことを続けます。

所謂、肺活量を増やすための運動です。

③風船を膨らませる

字の如く、風船を膨らませます。

連続して膨らませるのではなく、1回の吐き出す息でどれくらい膨らませられるのかが大事です。

徐々に大きい風船が膨らませられるように頑張りましょう。

まとめ

「嚥下」は口にいれた食べ物を自然に(嚥下反射で)食道へと送り込むことをいいます。

「誤嚥」は嚥下反射がうまく出来なくなることで、食べ物が気管に入ってしまうことを言います。

「誤嚥性肺炎」とは、口の中にある細菌が食べ物や唾液に付着し、それを誤嚥して吐き出せないで放っておくと、肺の中で炎症を起こしてしまうことです。

誤嚥性肺炎の予防には、力強い咳で吐き出す力や細菌感染に対する体力・免疫力が必要です。

そのためにしっかりと栄養を取り、口の運動や咳嗽力を鍛える運動を行いましょう。

誤嚥性肺炎は最悪死に至ります。

誤嚥性肺炎をする前後で生活は大きく変わります。

それは当事者からしたらとても、とてもツライことだと思います。

その当事者にならないために、そして既に誤嚥性肺炎と診断されてしまった人も改めて誤嚥性肺炎について知ることで原因と対策について理解できたかと思います。

出来るまでやれば出来る!

やりたいことを諦めない!

自分一人だけとは考えないでください。

いつでも医療スタッフに頼っていただければと思います。

これからもヒカリエブログでは「FIHEフィーヒ~QOLの向上~」をテーマにブログを更新していきます。

一度きりしかない人生をより質の高いものとするため、健康を土台に自由な生活を送れるように、皆さんへ有益な情報発信をしていければと思います。

今後も「資産運用」の話や「健康」、「経験」についてもお話していきますので、興味がある方は是非フォローよろしくお願いします。

本日も最後まで閲覧していただきありがとうございました。

参考文献

こんかいの記事は以下を参照して作成しております。

神経難病リハビリテーション100の叡智 (NanーReha):寄本恵輔 監・著

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